ビルや商業施設の清掃業界では、高齢化と人手不足が深刻な課題となっています。清掃業務に従事する労働者の約37%が65歳以上という現実の中、特定技能「ビルクリーニング」は、即戦力となる外国人材を合法的に受け入れられる制度として注目されています。

この記事では、ビルクリーニング分野で特定技能外国人を採用したい企業の担当者に向けて、受入れ要件・必要な登録・評価試験・対象業務・協議会加入など、実務に必要な情報をすべてまとめました。

37,000人2024〜2029年の受入れ見込み数(5年間の上限)
6,143人2024年12月末時点の在留者数(1号6,140人・2号3人)
37.2%ビル清掃従事者のうち65歳以上が占める割合

ビルクリーニング分野の特定技能とは

特定技能「ビルクリーニング」は、事務所・学校・商業施設・興行場・百貨店など、不特定多数が利用する建築物内部の清掃業務を担う在留資格です。厚生労働省が所管し、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会(全ビ協)が試験実施と協議会運営を担っています。

2019年の特定技能制度スタート当初から対象分野に含まれており、清掃業界の深刻な人材不足を補う制度として全国で活用が広がっています。

なぜ今、ビルクリーニング分野で注目されているのか

有効求人倍率がすでに2倍を超え(平成29年度実績:2.95倍)、65歳以上のベテラン層への依存が続くビルクリーニング業界は、構造的な採用難に直面しています。特定技能は即戦力レベルの技能が求められる制度のため、入社後すぐに現場で活躍できる人材を確保できる点がメリットです。

💡 技能実習・育成就労との違い 技能実習・育成就労は「人材育成・国際貢献」が目的の制度です。一方、特定技能は「国内の人手不足解消」を目的としており、転職が一定範囲で認められています。ビルクリーニング職種の技能実習2号修了者は、試験免除で特定技能1号へ移行できます。

受入れ企業が満たすべき要件

ビルクリーニング分野での特定技能外国人受入れには、共通要件に加えて分野固有の要件があります。

共通要件(全分野共通)

  • 外国人と日本人が同等の賃金・待遇となる雇用契約を締結していること
  • 受入れ機関自体が適切であること(過去5年間に不正行為なし等)
  • 外国人材の日常生活・社会生活の支援体制を整備していること

ビルクリーニング分野固有の要件

最も重要なポイントは、特定技能外国人を雇用する営業所が、都道府県知事の登録を受けた清掃業の営業所(建築物清掃業)であることです。建築物衛生法に基づく都道府県知事登録を取得していない事業所では、特定技能外国人を受け入れることができません。

また、ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入が義務付けられています。詳細は次のセクションで解説します。

⚠️ 注意:登録支援機関は協議会に加入できない ビルクリーニング分野の特定技能協議会は受入れ企業が加入対象です。登録支援機関は加入できないため、支援業務を外部委託する場合でも、受入れ企業自身が協議会加入の手続きを行う必要があります。

協議会への加入と手続き

受入れ企業は、最初の特定技能外国人を受け入れてから4か月以内に、ビルクリーニング分野特定技能協議会(厚生労働省設置)に加入しなければなりません。

項目内容
主管省庁厚生労働省(全ビ協が事務局)
加入対象受入れ企業のみ
加入期限最初の受入れから4か月以内
費用無料
登録支援機関加入不可

協議会では分野全体の適正な受入れ推進・情報共有・外国人材の保護が行われます。加入後は協議会から求められる調査やアンケートへの協力義務があります。

特定技能1号評価試験の内容

外国人が特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を取得するには、技能評価試験と日本語評価試験の両方に合格する必要があります。

試験実施機関と概要

公益社団法人全国ビルメンテナンス協会(全ビ協)が実施しています。国内試験に加え、フィリピン・ベトナム・インドネシア等の海外でも定期的に実施されています。

  1. 試験水準:技能実習2号修了相当(ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業)
  2. 試験形式:学科試験(真偽法・四択)+実技試験(実際の清掃作業)
  3. 合格基準:学科・実技ともに65%以上の正答率
  4. 出題範囲:日常清掃、定期清掃、ガラス清掃、外装清掃、衛生管理など

日本語試験の基準

試験合格基準
JLPT(日本語能力試験)N4以上
JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)基準点以上

試験が免除される条件

ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業の技能実習2号を良好に修了した外国人は、技能試験・日本語試験ともに免除されます。在留資格変更の書類手続きのみで特定技能1号へ移行できるため、技能実習からの移行は最もスムーズな採用ルートです。

✅ 育成就労制度との関係(2027年施行予定) 2027年施行予定の育成就労制度(技能実習の後継)でも、ビルクリーニング分野は引き続き対象となる見通しです。育成就労からの特定技能移行ルートが整備されることで、さらに安定した人材確保が期待できます。

ビルクリーニング分野の業務範囲

特定技能「ビルクリーニング」で従事できる業務は、必須業務・関連業務・周辺業務の3区分で定義されています。

区分主な業務内容
必須業務日常清掃(フロアモッピング・トイレ清掃等)、定期清掃(ポリッシャー洗浄・ワックス仕上げ等)
関連業務外装清掃(ガラス清掃)、廃棄物処理、消毒・殺菌処置、客室のベッドメイク、客室以外のベッドメイク
周辺業務設備点検補助、フロント受付補助など(一定の範囲内)

ベッドメイク業務の注意点

ホテルや旅館での採用を検討している場合、以下の点に注意が必要です。

  • ベッドメイクのみを主たる業務にすることは不可(清掃業務と組み合わせて従事することが前提)
  • 客室清掃(フロア・バスルーム等)との組み合わせが必要
  • 病院・介護施設等での「客室以外のベッドメイク」も関連業務として認められる
  • 宿泊業の特定技能(宿泊分野)とは在留資格・試験が異なるため、業務の主たる内容で分野を判断する

受入れの流れ

  1. 自社の資格確認:都道府県知事登録(建築物清掃業)を取得しているか確認する
  2. 人材の確保:海外現地採用(試験合格者)または国内在留者・技能実習修了者から採用する
  3. 雇用契約の締結:同等報酬・適正な契約内容を確認の上、雇用契約を締結する
  4. 支援計画の策定:自社で支援体制を整備するか、登録支援機関へ委託する
  5. 在留資格申請:出入国在留管理庁へ申請(国内変更または海外からの認定証明書交付申請)
  6. 就労開始・協議会加入:受入れから4か月以内に協議会加入手続きを完了させる

よくある質問

Q. ビルクリーニングと宿泊業の特定技能、どちらで採用すれば良いですか?

ホテル客室の清掃をメイン業務とする場合は、宿泊業分野での採用が原則です。一方、館内の廊下・ロビー・トイレなどの共用部清掃がメイン業務で、客室清掃もあわせて行うというケースは、ビルクリーニング分野での採用が適しています。業務の主たる内容で判断してください。

Q. 受入れ人数の上限はありますか?

ビルクリーニング分野には事業所単位の人数上限はありません。分野全体の受入れ見込み数(5年間37,000人)は設定されていますが、個別企業の採用数は支援体制の整備状況などにより実質的に決まります。

Q. 技能実習2号修了者はそのまま特定技能に移行できますか?

ビルクリーニング職種・ビルクリーニング作業の技能実習2号を良好に修了していれば、技能試験・日本語試験が免除されます。在留資格変更申請の書類手続きのみで特定技能1号に移行できます。

Q. 特定技能2号に移行することは可能ですか?

はい、可能です。要件は①ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験またはビルクリーニング技能検定1級に合格、かつ②現場を管理する立場での実務経験が2年以上あること、の両方です。2号では在留期間更新の上限がなく、家族帯同も認められます。

Q. 登録支援機関に委託した場合、協議会への加入は不要になりますか?

いいえ、協議会加入は受入れ企業自身の義務です。登録支援機関に支援を委託しても、協議会加入の手続きは受入れ企業が行う必要があります。

まとめ

📌 この記事のポイント
  • ビルクリーニング分野での特定技能受入れは、都道府県知事登録(建築物清掃業)を取得した営業所であることが大前提
  • 技能評価試験は全ビ協が実施。技能実習2号(ビルクリーニング職種)修了者は試験免除で特定技能1号に移行可能
  • 受入れ後4か月以内に協議会への加入が必要。登録支援機関は加入対象外のため、受入れ企業自身が手続きを行う

清掃業界の人手不足は構造的・長期的な課題です。特定技能「ビルクリーニング」を活用することで、即戦力となる外国人材を安定的に確保できます。まず自社の都道府県知事登録(建築物清掃業)の状況を確認し、採用計画を立ててみてください。

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