漁業の担い手不足は年々深刻化しており、「繁忙期だけ人手が欲しい」「季節によって必要な人数が変わる」といった漁業特有の悩みを抱える経営者・水産会社の採用担当者は多いのではないでしょうか。実は漁業分野の特定技能は、農業と並んで労働者派遣形態での受入れが認められている数少ない分野です。この記事では、漁業分野の特定技能の2つの業務区分、派遣を活用する際の要件、技能試験・日本語試験の内容までを整理して解説します。

17,000人2024〜2028年度の5年間の受入れ見込数
2区分「漁業」と「養殖業」で試験内容が異なる
N4以上1号に必要な日本語能力の目安

漁業分野の特定技能とは?2つの業務区分

漁業分野の特定技能は2019年の制度創設時から対象分野に含まれており、「漁業」と「養殖業」の2つの業務区分に分かれています。それぞれ担当できる業務内容が異なるため、自社の事業内容に合わせて区分を選ぶ必要があります。

  • 漁業区分:漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵など
  • 養殖業区分:養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、収獲(穫)・処理・保蔵など

特定技能2号に移行すると、上記の業務に加えて「操業を指揮監督する者の補佐」や「作業員の指導・作業工程の管理」といった管理業務も担えるようになります。2号には在留期間の更新回数に上限がなく、家族帯同も可能になる点は、長期的な戦力化を考える経営者にとって大きなメリットです。

💡 受入れ見込数が大幅増加 2024年度からの5年間(令和6〜10年度)の受入れ見込数は17,000人で、それ以前の上限(最大6,300人)から大きく引き上げられました。漁業従事者の高齢化と人手不足の深刻化が背景にあります。
📌 このセクションのポイント
  • 漁業分野は「漁業」「養殖業」の2区分に分かれる
  • 2号では管理業務も担当でき、家族帯同・更新回数上限なしが可能になる
  • 2024年度からの受入れ見込数は17,000人に拡大

漁業と養殖業、業務内容と試験の違い

「漁業」と「養殖業」は同じ特定技能「漁業」分野に含まれますが、試験は別物です。試験はいずれも一般社団法人大日本水産会が実施しており、学科試験(真偽式)と実技試験(多肢選択式)で構成されます。

項目漁業区分養殖業区分
主な業務探索・採捕・漁労機械操作など養殖資材管理・育成管理・収獲など
学科試験形式真偽式(○×)真偽式(○×)
合格基準合計得点6割5分以上合計得点7割4分以上
技能実習との関係2号を良好に修了で試験免除2号を良好に修了で試験免除

技能実習制度から特定技能への移行実績がある人材の場合、技能実習2号を良好に修了していれば技能試験・日本語試験の両方が免除されるため、既に技能実習生を受け入れている漁業者にとってはスムーズな移行経路になります。

派遣形態が使える理由と受入れ要件

漁業は農業と並び、特定技能外国人を労働者派遣の形で受け入れられる数少ない分野です。漁業には季節による繁閑差が大きいという業界特性があり、直接雇用だけでは人員配置が難しいことが理由とされています。

派遣を活用する場合、派遣元・派遣先それぞれに要件が課されます。

  1. 派遣元事業者の要件:漁業または漁業関連業務を行っている、あるいは漁業関係者が資本金の過半を出資し業務執行に実質的に関与していること
  2. 派遣先事業者の要件:労働・社会保険・租税に関する法令を遵守し、過去1年以内に同種業務の労働者を離職させていないこと
  3. 協議会への加入:初めて漁業分野の特定技能外国人を受け入れる場合、在留資格認定証明書交付申請の前に「漁業特定技能協議会」への加入が必須
  4. 受入れ計画の策定:派遣先ごとの業務内容・報酬・労働条件を明確にした計画を用意する
⚠️ 欠格事由に注意 過去1年以内に外国人材を行方不明にした実績がある、刑罰法令違反による罰則を受けているなどの欠格事由に該当する場合、派遣先・直接雇用のいずれの形態でも受入れができません。事前に自社の実績を確認しておきましょう。

受入れ機関・派遣先が満たすべき条件は次の通りです。

  • 労働・社会保険・租税に関する法令を遵守している
  • 特定技能外国人と同種業務の労働者を過去1年以内に離職させていない
  • 責めに帰すべき事由による行方不明者を過去1年以内に発生させていない
  • 漁業特定技能協議会に加入している(初回受入れ時)
  • 報酬額が日本人と同等以上である

受入れの流れ

  1. 区分の決定:自社の業務内容が「漁業」「養殖業」のどちらに該当するか確認
  2. 協議会への加入:漁業特定技能協議会への加入手続きを行う
  3. 人材の選定:技能試験・日本語試験合格者、または技能実習2号修了者から選定
  4. 雇用契約・支援計画の締結:直接雇用か派遣かを決め、条件を明確にした契約を結ぶ
  5. 在留資格認定証明書交付申請:出入国在留管理庁に申請し、在留資格を取得する

よくある質問

Q. 漁業分野は本当に派遣で受け入れられますか?

はい。漁業は農業と並んで、特定技能外国人を労働者派遣の形態で受け入れることが認められている分野です。ただし派遣元・派遣先双方に固有の要件があるため、事前確認が欠かせません。

Q. 技能実習からの移行と、試験合格ルートで違いはありますか?

業務内容や在留資格上の扱いに違いはありません。ただし技能実習2号を良好に修了している場合は技能試験・日本語試験が免除されるため、選考の手間が軽減されます。

Q. 漁業と養殖業、両方の業務をまたいで従事させることはできますか?

区分ごとに合格した試験区分の業務にしか従事させられません。漁業と養殖業の両方を任せたい場合は、それぞれの区分の試験に合格している人材を確保する必要があります。

まとめ

📌 この記事のポイント
  • 漁業分野の特定技能は「漁業」「養殖業」の2区分があり、試験内容・合格基準が異なる
  • 農業と同様に労働者派遣形態が認められており、繁忙期対応がしやすい
  • 2024年度からの受入れ見込数は17,000人に拡大し、協議会加入が受入れの必須条件

漁業分野は季節による繁閑差が大きい業界だからこそ、派遣という選択肢が用意されています。区分の見極めと協議会加入などの手続きを押さえておけば、人手不足解消の有効な選択肢になるはずです。

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