「整備士の求人を出しても応募が来ない」「若手が定着せず、ベテランの高齢化ばかりが進む」——自動車整備業界では、こうした人手不足の悩みを抱える工場が少なくありません。この状況を打開する選択肢のひとつが、外国人材を「特定技能」の在留資格で受け入れる制度です。本記事では、自動車整備分野における特定技能制度の対象業務、受入れ企業に求められる要件、認証工場との関係、申請から就労開始までの流れを、国土交通省・出入国在留管理庁の公表情報にもとづいて解説します。

3級相当技能水準は自動車整備士技能検定試験3級と同程度
2023年6月特定技能2号の対象分野に追加(在留期間の上限なし)
N4以上必要な日本語能力(JFT-Basic合格でも可)

自動車整備分野の特定技能制度とは

自動車整備分野は、2019年の特定技能制度創設時からの対象14分野のひとつです。人手不足が深刻な整備業界において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を即戦力として受け入れることを目的としています。

特定技能外国人が従事できる業務は、次のとおり定められています。

  • 日常点検整備
  • 定期点検整備
  • 特定整備(分解整備を含む)
  • これらに付随する関連業務(部品の取付け・清掃など)
💡 特定整備とは 2020年の道路運送車両法改正で「分解整備」の呼称が「特定整備」に変わり、対象範囲に自動運転関連装置(自動ブレーキなど)の整備も加わりました。特定技能外国人が特定整備を行う場合は、日本人整備士と同様、事業場ごとの体制・資格要件を満たす必要があります。

なお、2023年6月の制度改正により、自動車整備分野は「特定技能2号」の対象分野にも追加されました。1号は在留期間が通算5年までですが、2号は在留期間の上限がなく、要件を満たせば配偶者・子の帯同も可能です。また2号は自らの整備業務に加えて、他の作業員への指導・監督も担うことができます。

受入れ企業に求められる要件

自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れる企業には、他分野と共通の基準に加えて、業界特有の要件が課されます。

要件項目内容
協議会への加入国土交通省が設置する「自動車整備分野特定技能協議会」の構成員であること
協議会への協力調査への回答など、協議会の運営に必要な協力を行うこと
行政調査への協力国土交通省またはその委託先が行う調査・指導に応じること
事業場の要件特定整備を行う場合は認証工場(地方運輸局長の認証を受けた工場)であること
受入れ人数枠従業員である自動車整備士の人数を超えて受け入れることはできない(1号)
📌 受入れ前に確認したいポイント
  • 自社が認証工場・指定工場としての要件を満たしているか
  • 特定技能協議会への加入手続きが完了しているか(受入れ後4か月以内が期限)
  • 日本人整備士と外国人材が協働できる指導体制があるか

認証工場と指定工場の違い

自動車整備工場は、扱える整備の範囲によって「認証工場」と「指定工場」に分かれます。

  1. 認証工場:分解整備(特定整備)を行うために地方運輸局長の「認証」を受けた工場。特定技能外国人が特定整備業務に従事するための前提となる。
  2. 指定工場:認証工場のうち、検査設備や技術力が一定基準を満たすとして「指定」を受けた工場。自社で車検(保安基準適合証の交付)まで完結できる。

特定技能外国人を特定整備業務に従事させる場合、受入れ企業の事業場が認証工場であることが前提です。指定工場であることまでは必須ではありませんが、業務範囲の広さから指定工場での受入れが多い傾向にあります。

特定技能評価試験と技能検定3級の関係

特定技能1号として就労するには、原則として「自動車整備分野特定技能評価試験」に合格する必要があります(技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除)。

💡 試験の難易度の目安 評価試験で求められる技能・知識の水準は「自動車整備士技能検定試験3級」と同程度とされています。学科試験は四択40問・80分、実技試験は状況判断を問う3課題・30分の構成です。あわせて日本語能力を確認するため、日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格が必要です。

試験はプロメトリック社が国内外で実施しており、フィリピン・インドネシア・ミャンマーなど複数国での現地受験も可能です。合格者数は年々増加しており、送出し国の広がりとともに人材確保のルートは拡大しています。

受入れの流れ

  1. 自動車整備分野特定技能協議会への加入:受入れ計画の策定と合わせて手続きを進める
  2. 人材の確保:評価試験合格者・技能実習2号修了者を、登録支援機関や人材紹介会社等を通じて探す
  3. 雇用契約の締結:日本人と同等以上の報酬水準など、特定技能の基準を満たす契約内容とする
  4. 在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)または在留資格変更許可申請(国内切替の場合)
  5. 入国・就労開始:支援計画に基づく生活オリエンテーションなどを実施

在留資格の審査には数週間から数か月かかることがあるため、採用が決まってから就労開始までの期間には余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。

よくある質問

Q. 技能実習からの移行は可能ですか?

自動車整備分野で技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能評価試験を受験せずに特定技能1号へ移行できます。日本語能力試験の合格も原則不要です。継続して同じ職場で働ける点が、受入れ企業・本人双方にとってメリットになります。

Q. 特定技能2号になると何が変わりますか?

在留期間の上限がなくなり、更新を続ける限り長期就労が可能になります。また要件を満たせば配偶者・子の帯同が認められ、単独作業に加えて他の作業員への指導・監督業務も担当できるようになります。長期的な戦力として育成したい人材には2号への移行を見据えたキャリアパスの提示が有効です。

Q. 外国人材だけで整備工場を運営することはできますか?

特定技能外国人はあくまで日本人整備士と協働することが前提の制度であり、事業場の体制や指導・管理の観点から、外国人材のみで完結させる運用は想定されていません。日本人整備士による指導体制の維持が求められます。

まとめ

📌 この記事のポイント
  • 自動車整備分野の特定技能は、日常点検・定期点検・特定整備(分解整備)に従事でき、2023年6月からは在留上限のない特定技能2号にも対応
  • 受入れには自動車整備分野特定技能協議会への加入と、特定整備を行う場合は認証工場としての要件充足が必須
  • 技能水準は自動車整備士技能検定3級相当、日本語はN4以上が目安で、技能実習2号修了者は試験免除で移行できる

自動車整備分野は業界特有の許認可(認証工場・指定工場)が絡むため、一般的な特定技能の枠組みだけでなく、運輸局の基準もあわせて確認しておくことが受入れ成功のポイントです。制度の全体像は特定技能制度とは、長期雇用を見据えた場合は特定技能2号ガイド、実際の採用プロセスは外国人材採用の流れもあわせてご確認ください。