外国人材の採用では、在留資格の申請そのものは行政書士や登録支援機関が支援してくれます。しかし、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」は事業主自身の義務であり、代行してもらえるものではありません。そして出し忘れれば、罰金の対象になります。
さらに2026年6月14日からは在留カードの様式が切り替わり、券面確認の実務そのものが変わりました。2027年4月には不法就労助長罪の罰則も引き上げられる予定です。「知らないうちに違反していた」という事態を防ぐため、この記事では届出のルール、在留カード確認の手順、罰則リスクの全体像を一度に整理します。
外国人雇用状況の届出は全事業主の義務
外国人雇用状況の届出は、労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)に基づく義務です。外国人を雇い入れたとき、そして離職したときに、その都度ハローワークへ届け出る必要があります。
- 対象は、正社員・契約社員・パート・アルバイトを問わず、外国人労働者を1人でも雇うすべての事業主
- 届出義務が免除されるのは、在留資格「外交」「公用」の人と特別永住者のみ
- 事業所規模による例外はなく、従業員が数名の会社でも義務は同じ
厚生労働省が令和8年1月に公表した集計では、この届出をもとに把握された外国人労働者数は257万1,037人(前年比11.7%増)、外国人を雇用する事業所は37万1,215所(同8.5%増)となり、いずれも届出が義務化された2007年以降の最多を更新しました。届出は単なる事務手続きではなく、国の外国人雇用政策の基礎データそのものになっています。
届出の期限は雇用保険の加入有無で分かれる
届出の期限と使う様式は、その外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかで変わります。ここを混同すると届出漏れが起きます。
| 区分 | 雇入れ時の期限 | 離職時の期限 | 使用する様式 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者 | 翌月10日まで | 離職日の翌日から10日以内 | 雇用保険被保険者資格取得届/喪失届(在留資格等の欄に記入) |
| 被保険者でない | 翌月末日まで | 翌月末日まで | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) |
届出事項は、氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍・地域、資格外活動許可の有無、在留カード番号などです。いずれも在留カードで確認できる内容で構成されています。
- 在留カードを確認:本人から現物を提示してもらい、氏名・在留資格・在留カード番号などを記録する
- 就労可否を判断:予定している業務が在留資格の範囲内か、資格外活動許可が必要かを確認する
- 様式を選ぶ:雇用保険の加入有無に応じて、資格取得届か様式第3号かを決める
- 期限内に提出:ハローワーク窓口のほか、e-Govまたは外国人雇用状況届出システムで電子申請も可能
- 記録を残す:届出の控えと在留カードの確認記録を保管し、在留期限をカレンダーで管理する
2026年6月14日から在留カードが新様式に切り替わった
2026年6月14日、在留カードの仕組みが大きく変わりました。マイナンバーカードと一体化した「特定在留カード」と、一体化を選ばない人に交付される新様式の在留カード(第二世代在留カード)が導入され、券面のデザイン、記載事項、ICチップの仕様が従来カードから変更されています。
特定在留カードの取得はマイナンバーカードと同様に任意で、在留カードとマイナンバーカードを別々に持ち続けることもできます。ただし、一体化を選ばない人にも新様式のカードが交付されるため、企業側は新旧が混在する状態に対応しなければなりません。
- 券面の記載位置が変わったため、旧来の確認マニュアルや社内チェックシートは更新が必要
- 在留カード等読取アプリケーションを最新版に更新しないと、新カードを読み取れない
- 特定在留カードの交付申請は窓口のみのため、従業員が手続きに出向く時間への配慮が必要
- 切替期間中は旧カードと新カードが並存するため、両方の券面を見分けられる体制を整える
在留カードの真正性は読取アプリで確認する
偽造在留カードは実際に流通しており、券面を目で見るだけでは判別できません。ここで使うのが、出入国在留管理庁が無償提供している「在留カード等読取アプリケーション」です。ICチップの情報と券面の記載を照合し、カードが真正なものかどうかを確認できます。最新版では在留カード等番号の失効情報を即時照会する機能も加わり、取消や失効を受けたカードをその場で見抜けるようになりました。
- アプリを準備:スマートフォンまたはPCに公式アプリを導入し、常に最新版に保つ
- 本人の同意を得る:目の前で本人からカードを提示してもらい、読み取りの同意を得る
- ICチップを読み取る:券面の記載内容とICチップの情報が一致するかを確認する
- 失効情報を照会する:在留カード等番号と有効期間満了日で、失効の有無をチェックする
- 顔写真と本人を照合:カードの写真と目の前の本人が一致するかを最後に確認する
不法就労助長罪は知らなかったでは免れない
在留資格のない外国人や、在留資格の範囲外の業務に就かせた場合、事業主は入管法第73条の2の不法就労助長罪に問われます。該当するのは主に次の3パターンです。
- 不法滞在者・オーバーステイの人を働かせた
- 就労が認められない在留資格(許可を得ていない「留学」「家族滞在」など)の人を働かせた
- 資格外活動許可の範囲(原則として週28時間以内など)を超えて働かせた
この罪が重いのは、故意でなくても成立しうる点です。「本人が大丈夫だと言っていた」「在留カードを見ていなかった」といった説明は抗弁になりません。確認義務を果たしていなかったこと自体が問われます。
そして2024年に公布された改正入管法により、2027年4月に罰則が引き上げられる予定です。
| 項目 | 現行(2027年3月まで) | 改正後(2027年4月以降) |
|---|---|---|
| 拘禁刑 | 3年以下 | 5年以下 |
| 罰金 | 300万円以下 | 500万円以下 |
罰則の重さ以上に痛いのは、事業所名の公表や取引先からの信用失墜、特定技能・育成就労の受入れ資格への影響です。採用時の確認コストは、この結果と比べれば圧倒的に安い投資です。
外国人雇用管理指針は3段階で適用が進む
厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(外国人雇用管理指針)も改正され、2026年6月14日から段階的に適用が始まっています。
| 適用時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 2026年6月14日 | 同一労働同一賃金ガイドラインの徹底、日本語学習支援への取り組み、雇用状況届出における読取アプリの活用と新様式在留カードへの対応 |
| 2026年10月1日 | 有期雇用労働者の雇入れ時の労働条件明示事項に「待遇の相違の内容・理由の説明」が追加 |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度の施行にあわせた雇用管理への移行 |
指針そのものに直接の罰則はありませんが、ハローワークによる助言・指導・勧告の基準になります。指針に沿った運用ができていないと、届出の適正化や労務管理の改善を求められることになります。逆に言えば、指針は「監督機関が何を見ているか」のチェックリストとして使えます。
よくある質問
Q. 届出を忘れていたことに後から気づきました。どうすればよいですか
気づいた時点で、速やかにハローワークへ届け出てください。期限を過ぎた届出も受け付けられます。放置したままにするほうが、30万円以下の罰金という結果に近づきます。あわせて、他の従業員についても届出漏れがないか全件を棚卸ししておきましょう。
Q. 在留カードのコピーを取れば確認したことになりますか
コピーだけでは不十分です。偽造カードはコピーからは見分けられません。現物の提示を受け、読取アプリでICチップと券面を照合し、顔写真と本人を確認する。ここまでを1セットとして運用してください。
Q. 永住者や日本人の配偶者等でも届出は必要ですか
必要です。就労制限のない身分系の在留資格であっても、届出義務の対象になります。免除されるのは在留資格「外交」「公用」の人と特別永住者だけです。
Q. 在留期限が迫っている従業員がいます。企業側で何をすべきですか
更新申請は本人の手続きですが、企業として在留期限の一覧を管理し、3か月前を目安に本人へ案内するのが実務上の定石です。更新申請中であることを確認し、期限切れのまま就労させない状態を保ってください。
Q. 派遣社員や請負先の外国人についても届出が必要ですか
届出義務は雇用契約を結んでいる事業主にあります。派遣なら派遣元、請負なら請負会社が届け出ます。ただし、受入れ側にも就労資格を確認する責任は残るため、契約先に確認記録の提出を求める運用が安全です。
まとめ
- 外国人雇用状況の届出は全事業主の義務。雇用保険の被保険者は翌月10日まで(離職時は翌日から10日以内)、被保険者でない人は翌月末日までが期限で、怠れば30万円以下の罰金の対象になる
- 2026年6月14日から特定在留カードと新様式在留カードが導入され、券面の記載位置とICチップ仕様が変更。読取アプリの更新と確認マニュアルの見直しが必須になった
- 不法就労助長罪は過失でも成立し、2027年4月に5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金へ厳罰化される予定。採用時の確認3点(現物・読取アプリ・顔照合)を仕組みとして定着させることが最大の防御になる
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